一言でいうと 「アラフォー女子とJKの百合なんて…夢があるねえ」(CV:安元洋貴)って感じでしたので、上記キーワードが琴線に触れた方にはおすすめです。1冊で完結している連作短編集なので、入間人間先生の百合ってどんなんやろー? ってかた(自分含め)にも手に取りやすいかと。
ちなみにわたくしは表紙が仲谷鳰先生ということは知らずに買いました。
以下、ネタバレ感想なので既読のかたのみお読みください。
わたしの理解が間違っていたら申し訳ないのですが、各話(短編)の視点=主人公は下記のとおりかと思います。
1. ガールズ・オン・ザ・ラン=アオ
2. 銀の手は消えない=芹
3. 君を見つめて=「私」(芹の姪)
4. 今にも空と繋がる海で=前半(277ページの前半まで)がアオ、後半が芹
以下、エビデンス
・芹には3つ上の兄がいる(ガールズ・オン・ザ・ランより)
・芹は大学に入ってから髪を伸ばしている(ガールズ・オン・ザ・ランより)
・「今にも空と繋がる海で」前半に「足を折った」「競争相手より相当足が速い」描写
・「青色好きなんですか?」と姪に聞かれている=アオが相手ならその質問はでないはず(今にも空と繋がる海で・後半より)
「今にも空と繋がる海で」前半はどう見てもアオ視点としか思えないのですが、後半は別人物の視点に切り替わっていると考えれば説明がつきます。
ということで、叔母=芹という前提で話を進めますと、芹が報われてよかったああああって一言につきます。
いや、だってガールズ・オン・ザ・ランの芹って酷い仕打ち食らいすぎですよね?
ずっと好きだったアオの眼中には結局入ることができず(夢と現実の区別がつかない特異な点はアオに気づかれることなく終わっている)、アオと一緒に暮らし始めて夢叶ったと思ったのもつかの間、結局アオは別の人に惹かれてしまう……って。
そういう仕打ちを受けた芹がいうからこそ「人混み(アオが想い人を見出した場所)は何かを失いそうで怖い」「失ったものを取り戻すことはできない」という言葉に重みが生まれます。
そういう過程を経てようやく芹が得た自分を想ってくれるひとがいる、かつ自分もその相手を好きになっていると喜びは察するに余りないでしょうか? まあその相手が姪というのは不安な影を落としますが、そこは気にしても仕方がない。
想い人を失い、夢の中で何度となく別れを経験し、片目すら奪われた彼女がようやく何かを得た、そのことを僕は素直に喜びたいのです。
そんなわけで、そのうち『安達としまむら』シリーズも読んでみようかなあと思う程度には良い作品でした。